猫伝染性腹膜炎(FIP)治療の今(2021年4月現在)

数年前までは、ほぼ100%亡くなってしまう病気でしたが現在では、9割以上の猫さんを寛解に持ち込める病気となりました。
治療の進化にはすばらしいことです。

しかし、一方で、効果の無い治療(サプリメントは、そもそも効果を謳ってはいけない)を広告している、また、FIPの治療に慣れていない動物病院が間違った治療を行い、亡くなってしまうというFIP治療ブームに乗じた事態も多発しています。

高額な治療費をかけたにも関わらず治療がうまくいかず、再発している症例も多く見られます。

FIPは、以下に記述しました良い薬の出現で、治る病気になりましたが、魔法の治療薬が出現したわけではありません。良い薬も正しく使わなければ、効果がありません。

安易にネット広告の情報に騙されず、FIP治療の実績のある獣医師にご相談いただきたいと思います。

以下に、現在行われているFIPの治療と、私の個人的な考えを書きます。参考にしていただければ幸いです。(FIP治療の現在の状況を説明しているだけで、特定の薬物の広告をする意図はありません。)

 

① MUTIANによる治療

② GS-441524による治療

③ Molnupiravirによる治療

④ インターフェロンやステロイドによる治療

⑤ サプリメントによる体調管理

  1. 5-ARA

  2. コルディ

  3. RetroMAD1

 

 

① MUTIANによる治療
MUTIANは、当院で現在一番多く採用されいる治療方法です。後述するGS-441524という薬というヌクレオシドアナログ系抗ウイルス薬と同じ機序で、FIPウィルスの増殖を抑えます。今まで、安定した実績を残しており、事様々な批判がありながらも日本で最も多くの猫を救った薬であるといっても過言ではありません。
治療効果はとてもよく、大きな副作用も報告されておりません。1週間ほどで薬の効果が現れますが、84日間の投薬管理が必要となります。また、MUTIAN指定の協力病院では、再発に対する保証があります。今現在、確実に治療を行うのであれば、MUTIAN以外の選択は難しいと感じてます。

② GS-441524による治療
ギリアド・サイエンシズによって作られたヌクレオシドアナログ抗ウイルスがある化合物です。実際には、薬として販売されておらず、実際世の中に出回っているものは、中国のメーカーが独自に原薬を注射薬や内服薬に加工したものです。
「GS」という略称で広まっていますが、メーカにより品質や効果もばらばらです。パッケージに製造年月日が書いていないものも多く、そもそも包装されずに、チャック袋に入れられてるものも多いです。
価格はMUTIANより安価ですが、品質もバラバラです。すべてのメーカーが「うちの製品は、清潔な製薬工場で作られ、GSの濃度が高く、再発もなく、しかも安いです」という売り文句をコピペのように並べますが、話半分に聞いたほうがよいでしょう。
メーカーを選んで、治れば安く済む(MUTIANの半額くらいです)のでラッキーくらいに考えたほうが良さそうです。(もし、使用を検討されてる方がおられましたら、私の知る限りのアドバイスすることはできます)
また、この化合物に関しては、ギリアドの特許を侵害しているという問題点があります。
ギリアドに訴えられては消え、また名前を変えて登場するという、そもそも製薬としての信頼性に疑問があり、偽薬も多いため注意が必要です。

③ Molnupiravirによる治療
MUTIANとGS-441524と同じヌクレオシドアナログ系抗ウイルス薬です。GS-441524とは違い、内服薬として人間のSARS-CoVの治療薬として医薬品認可のために第Ⅲ相試験にはいっています。
発売元の米Merck社はインドの大手ジェネリックメーカー5社と非独占的で社会貢献的なライセンス契約を締結しており中所得・低所得国への人道的な供給を目指しています。
一部猫における治験も行っており、FIPの治療薬としても使用されています。価格はMUTIANに半分ほどです。
現在、当院でも試験的に取り扱っています。GS-441524と比較し、短期間の治療で済むと考えられ、安価で、人薬としての承認も間近とされていることから数年後この薬がFIP治療の主流になる可能性はあります。まだ、MUTIANと比較し、実際の症例数、各方面の報告が少ないという点が欠点です。

④インターフェロンやステロイド、イトラコナゾールによる治療
上記の薬が出る前に緩和療法として採用されていた。現在では、寛解に向けた治療としては行われていません。

⑤ サプリメントによる体調管理

1. 5-ARA
北里大学で実験されたサプリメントです。EneARAという名前でサプリメントとして発売されています。あくまで「健康補助食品」のサプリメントなので「健康に良い」くらいに考えておいたほうが良いと思います。

2. コルディ
あくまで体にいいサプリメント扱いです。広告では、FIPに効くとは書いておらず、あくまで飼い主が「よい」と経験談を書いているだけにすぎないとこが注意です。
人間のサプリメントの「こんなに腰がよくなりました!(*個人の感想です)」と同じ類です。
何度も言いますが、サプリメントは効果効能を謳ってはいけません。やらないよりやったほうがいいかな?くらいで、治療で使おうとするのは間違いです。

3. RetroMad1
nyAERAという雑誌で、サプリメントとして登場すると宣言された薬物。
基本的に、サプリメントによる治療は、治療ではなく、健康補助食品として「健康に良い」くらいに考えておいたほうが良いと思ってます。。

 

書いた人

佐瀬 興洋
佐瀬 興洋
【経歴】


2004年 麻布大学獣医学科卒業

2006年 Watpo Thai Traditional Medical School(General Massage) 修了

2008年 ユーミーどうぶつ病院開院

2013年 HJS 整形外科研修

2014年 DePuy Synthes Vet Spine Seminar Basic Course 修了

2014年 DePuy Synthes Vet Spine Seminar Advance Course(神経外科) 修了

2014年 HJS Night Vets Club “Liver Night” 参加

2015年 HJS World Class Program “TPLO”参加


【所属学会・資格】
公益社団法人千葉県獣医師会所属
公益社団法人佐倉青年会議所2018年度監事

獣医麻酔外科学会・日本獣医循環器学会・獣医再生医療研究会・ISFM(国際猫医療学会)・JVOC(日本獣医眼科カンファランス)獣医眼科手術研究会




当たり前のことですが、なるべくしっかりとした診断を付けることを目標にしています。

その上で、出来る限りの治療を行えるように努力しています。
外科分野では骨折や脱臼などの整形外科、泌尿器や消化器、肝臓、胆嚢の軟部外科、皮膚形成外科、椎間板ヘルニア、会陰ヘルニアなどの手術を得意としております。
近年小型犬種にも増えている前十字靭帯断裂などの膝疾患の治療に力を入れており、TPLOのような専門的な手術も実施しております。
内科分野においても幅広く勉強しております。
内視鏡や超音波診断装置を使用しての消化器系の検査も行なっておりますので。 どうぞご相談ください。

飼い主様が安心してご来院できるよう最新の知識・技術の研鑽を怠らないように心がけています。